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頑張っています!!同窓生 (第三回)

小林正志氏(61回)
東京都品川区 日本網膜色素変性症協会監事

今回は、京浜急行線「大森海岸」駅近くにある日本網膜色素変性症協会の監事である小林正志氏(61回)を訪ねて来ましたので、その活動やパワーなどをご紹介いたします。https://jrps.org/ 

(文責65回三浦 尚城)

皆さん網膜色素変性症という病気をご存知でしょうか? 私は初めて聞く病名でした。お伺いするにあたり少しは勉強しようと思い、インターネットで病名を検索し調べてみましたが、「網膜色素変性症は目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜という膜に異常をきたす遺伝性、進行性の病気です」とある。症状は、夜盲、視野狭窄、視力低下、最後は失明です。 そして、この病気の怖いところは、まだ治療法が確立していないというところにあります。

そんな予備知識を得ながら大森海岸の駅を降りたのですが、気持ちとしては重いものがありました。何と言っても治療法の無い難病を抱えた先輩を訪ねるのですから・・・。

 

大森海岸駅からは、点字ブロックが敷き詰められてあるので、それを頼りに歩いていく。

途中イルカのショーで有名な「しながわ水族館」や「鈴が森刑場遺跡」の前を通り、ほぼ7分位で日本網膜色素変性症協会のビルに辿り着く。
小林氏の自宅はこのビルの道路を挟んだ反対側である。また、協会のビルも小林氏の所有という。

道しるべになっている点字ブロックは、12年前に協会が神田から移転した際に品川区がわざわざ施設してくれたそうである

 

エレベーターで4階まで上がる。ドアが開くとすぐ協会の事務所である。広い事務所だ。

三浦です。と声をかけると女性の事務員さんが「どうぞ」というのと同時に奥から張りのある声で「こちらへ」と声がする。顔を向けると元気そうな男性が「小林です」というので、「お邪魔します」と言って向かい合わせに座る。
イメージしていた先輩とは全く違い、元気はつらつで声のでかい方なので少し戸惑う。

とにかく元気で明るい。声にも張りがあり、とても難病を抱えているとは思えない。しかし、本当に驚くのは暫くしてからだった。

網膜色素変性症の発症は約4,000人に一人という。小林氏は45歳で網膜色素変性症と診断される。

テニスが好きで40年前からテニスをしていたというが、落ちているボールを探すのに苦労している姿に気付いたテニスクラブの芝学園の先輩(医師)に諭され、病院で診察を受けたところ、この病気を宣告された。この病気は徐々に視野が狭くなるため、大きな交通事故を起こして初めて網膜色素変性症と気が付く人もいるという。

小林氏は、現在残存視野10度というが、これは双眼鏡を常に見ている状況だという。左右も上下も見づらいため、決して道路で飛び出すことはしないという。視野が狭いということは、目を動かしたり、首を動かしたりしないと周りが把握できないのだ。

日本網膜色素変性症協会が出来たのは、1994年という。新聞に患者の会ができたという記事を見て入会したそうである。第1回の新聞の呼びかけでその時に600人が集まったという。

この病気を発症したとき、何と死ぬことよりも、失明するということのほうが怖かったという。そんな恐怖も、同じ病気を持つ仲間と話すことにより、徐々に気持ちが楽になってきたのだという。一人で悩んでいたときに比べ励ましあえる仲間がいるというのは、心強いものだ。小林氏の会員ナンバー53番は協会草創期のナンバーを意味する。その後18年を経て、会員は4000名を数えるまでになっている。

それから小林氏は同じ病気を持つ仲間のために東京支部の副支部長を皮切りに2001年から協会の理事になり、現在は監事として活躍している。

趣味は将棋とテニスであるが、母校の鈴ヶ森小学校のスマイルスクールで1・2年生に将棋を教えてもいる。また週1回のテニスも続けているが、ボールはよく消えて見えなくなってきたと苦笑いを浮かべるが、屈託がない。

小林氏は、毎週金曜日に相談員として協会に詰めている。

ちょうどこの日も相談日で、患者の方から電話が入ってきた。患者の方は不安である。誰かに話しを聞いてもらいたい。励ましてもらいたい。そんな思いから電話をしてくるのだろう。

小林氏はそんな方々に時には優しく、また、時には励ますように30分〜60分も時間をかけて相談に乗っている。

 

どこにそんなパワーがあるのか? 大変不思議に思い聞いてみた。
そうしたら、小林氏から驚くべき発言が飛び出したのだ。

実は60歳の時、腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)(https://www.pmp-jp.com/)という癌を発症したというのだ。これは、100万人に一人という難病中の難病である。

東京の専門病院で手術をしても全部は取りきれない。待っていたのは「まだお腹にガンは相当残っていますが、後は内科に行って相談ください。5年生存率15%と思ってください」という絶望的な宣告だったという。

次いで、薬物療法の1クールが終わる頃、友人が上記のHPを紹介してくれた。すぐに会に連絡を取り患者と会い、執刀医のセカンドオピニオンを受けたあと、速やかに再手術を申し込んだ。

ガンが付いた色々な臓器を切除するというハードな内容だったが、芝の同期の医師にも相談に乗ってもらい決断した。この手術はもう一度行なったので、丸2年間で3度もの開腹手術をしたことになったという。

しかし、ここからが小林氏の本領発揮である。日本網膜色素変性症協会の監事を務めながら、「腹膜偽粘液腫患者の会」の役員も兼務し出したのだ。
網膜色素変性症で患者の会の必要性を実感した小林氏はここでも患者の相談役を買って出ている。

同窓会の理事や委員会の仕事で忙しいと愚痴をこぼしている私としては、恥ずかしい限りである。

小林氏を見ているとパワフルで明るくてとても難病を2つも抱え、余命何ヶ月などという姿ではない。

「仕事を辞め、ガンが一段落した今、人のために働けるというのは幸せなことなので、楽しんでやっている。頼まれた仕事はできるだけ請けようと思っている。」と言われてしまうと、私など何も言えなくなってしまう。

ここへ来る途中の足取りの重さは何だったのか? 私が励まされ、パワーをもらっていることに驚きと感謝が入り混じってきた。
芝の卒業生はこうでなくちゃいけないと一人で納得した。

小林氏は病院でも「不死身の小林さん」と呼ばれているそうだ。ここまでパワー全開だと病気も逃げるのだろう。

網膜色素変性症の宣伝と患者が使用するために白黒反転カレンダーを毎年1800部作って、全国の病院などにも配っているそうだが、これも小林氏のデザインと聞いて驚いた。

余談だが、目の見えづらくなった芝学園の恩師にも毎年謹呈しているという。

 

もし、網膜色素変性症や腹膜偽粘液腫の方が近くにいましたら是非小林氏のところへ相談に行ってください。また、勧めて下さい。 いや、ここまで難病でなくても病気を一人で悩まず、芝学園の卒業生だと言ってもらえば、きっと小林氏は喜んで親身になって相談に乗ってくれるはずです。 体は病んでいても、心はすぐにでも元気になること請け合いです。

帰り際、仕切りパネルに貼ってあった患者からのお礼の手紙と色紙を見てどきっとした。

「神様お願いがあります。目の視野が狭くなった分、心の視野が広くなりますように。」

目の視野が広いのに、心の視野が狭い人が多すぎるな。
え、これって私のこと。

何だか今日は大きな力をもらって勇気づけられ、帰りの足取りはそれはそれは軽いものになった。

◯ 小林氏から一言 ◯

どんなに小さな病気でも、元気な人が病気になれば落ち込むのは当たり前です。
そんな時、元気だった人ほど苦しむのですが、病気によっては患者の会が存在しますので、来るだけ早く患者の会を探して訪ねて欲しいと思います。

万が一、難病などの場合はお医者さんでも分からないことがいっぱいあります。患者だから分かることや、話が通じることがあります。 また、命に関わる病気のときは、(経験上)セカンドオピニオンは絶対必要だと思っています。是非、頑張って、ベストと思われる医師や病院を探してみてください。

最後になりましたが、大病をすると患者本人は開き直ることもできるのですが、それを見守る家族の心痛は計り知れないものがあります。
生きる支えとなってくれた、愚妻と3人の子供たちと孫に改めて感謝しています。

連絡先
小林 正志
日本網膜色素変性症協会
〒140-0013 東京都品川区南大井2-7-9 アミューズKビル4階
TEL 03-5753-5156
FAX 03-5753-5176
E-mail koba2-1938●heart.ocn.ne.jp 
    (※メール時には●印を@に変更をして送信をしてください)

<余談>
日本網膜色素変性症協会の入っているビルの3階には61回の同期生藤原 孝之氏が経営するNPO健康科学研究開発センター(RIHSE)があり、そこに同じく同期の森 良之氏も勤務している。(https://rihse.jugem.jp/
近くへ来たら是非お寄りください。

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