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奥田進一拓殖大学教授 |
モンゴル国友好勲章(ナイラムダルメダル)というのは、モンゴル国大統領が外国人に授ける勲章としては2番目の高位勲章です。
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*モンゴル国友好勲章
(よく見るとメダルの中央で握手をしています) |
モンゴル国友好勲章記 |
奥田進一拓殖大学教授
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ウフナーギーン・フレルスフ大統領が外遊中の為、ブルガン外務次官補より授章
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ウフナーギーン・フレルスフ大統領が外遊中の為、ブルガン外務次官補より授章
先ずは簡単に略歴をお聞きし、その後モンゴルとの関りを教えて頂きました。
奥田氏は、芝学園を卒業後早稲田大学法学部に入学し、その後早稲田大学大学院 法学研究科 修士課程(民事法学専攻)を修了したとのことです。
拓殖大学には、2003年4月政経学部の専任講師として採用され、2005年4月に助教授、2013年に教授になられ現在に至っています。その間、早稲田大学大学院や明治大学大学院の非常勤講師としても教壇に立っています。
略歴をお聞きしてもまだモンゴルとの接点が出てきませんので、受賞までの経緯を次にお聞きしました。
2005年の助教授時代に民法や土地法がまだ整備されていないモンゴル、ベトナム、カンボジアを対象に法整備の為に支援しようという法務省の法整備支援プロジェクトが名古屋大学を中心に立ち上がり、法学者などが検討会で議論していた時に奥田氏はモンゴルチームに参加して関わることになりました。
何故参加することになったのか?奥田氏は駆け出しのころから中国の内モンゴルの土地法研究をされていて論文なども発表していたそうです。
その論文を見た方からモンゴルの土地法整備を支援するには内モンゴルの事例が役に立つという事で、お誘いを受けて参加することになったそうです。
支援プロジェクトは、5年の有期プロジェクトで2005年から期間中何度もウランバートルへ行くことになったそうです。
丁度その時、モンゴルでは土地所有法が出来、その法を軌道に乗せることが支援プロジェクトの仕事であったそうです。
しかし、なかなかうまく軌道に乗らず、法律とは別に新しい政策なども提言したようですが、任期の5年が過ぎプロジェクトは解散することになったそうです。
その時に一緒に法整備に携わったモンゴルの当時の若い研究者が、今回の叙勲の推薦してくれたとのことでした。他の研究者もいる中でそれだけで今回の受賞に至ったとはどうも考えにくいので、詳しく話をお聞きすると、拓殖大学のプロジェクトに環境演習(フィールドワーク)というものがあり、奥田氏が立ち上げたモンゴルの環境演習の他にアフリカ、インドネシア、ドイツがあり、拓殖大学の学生は手を挙げれば好きなところに行けるようになっていました。
奥田氏が立上げたモンゴルの環境演習は、植林でした。学生を連れて砂漠に行き植林をするプロジェクトです。このプロジェクトは2006年から2009年まで続きましたが、拓殖大学としては負担が大きくなりここで終了することになります。
しかし、この活動を聞いた学習院大学などがモンゴルでの植林活動を始め、奥田氏の知らないところで波及していきました。
今まで学生を連れて活動を行う例がなく、それがモンゴルの大統領の目に留まり、若い人をこのような活動に参加させる先鞭をつけてくれたという事で、今回法整備支援活動と植林活動の両方で友好勲章の推薦をしていただき受賞することになったとのことでした。
学生を連れての植林は2009年まででしたが、その後社会人などと共にモンゴルの植林活動に携わったのは2015年くらいまでとのことです。
学習院大学がかなり力を入れていましたので、その後はバトンタッチをしたような形になりました。
お話を聞く中で、今回の受賞の出発点になった中国の内モンゴルの土地法研究をなぜ行おうと思ったのかが不思議でなりませんでしたので、お伺いしてみました。
奥田氏曰く、大学院生時代に教授から中国の内モンゴルに調査を行くがついてこないか?と誘われたのが始まりでした。大学の教授は私が中国語を話せるので、通訳代わりのつもりだったのかもしれませんが、草原やチンギスハーンへの憧れなどもあり、面白そうなので行くことにしました。
しかし、行ってみると草原は無く全部砂漠でした。現地の大学の教授にどうしてこうなったのかと聞くと砂漠化ですとの答えで、どうしたら砂漠化を食い止められるか、また、元に戻せるかという事を研究したいのであなたも協力してくださいと言われたそうです。
だが話が大きすぎるのでどうしたものかと考え、本格的に研究をはじめたのは2002年頃だそうです。資料を集めたり、中国の土地法を調べたりして研究を重ねました。
あの時、恩師の誘いが無ければこのようなことになっていなかったと思われ、何がきっかけになるか不思議ですね。
ただ、困ったのは旅費の問題でした。10日間の日程で当時の金額で50万円ほどかかるとのことでした。丁度ゴールデンウイークの時期でもあったのと、学会の旅行だという事で旅行会社も少し吹っ掛けたのかもしれません。
先生方は、研究費で賄えますが、私は学生でしたのでそんなお金はありませんでした。その時、父に相談すると50万円をポンと出して「これで行って来い!」と言ってくれたので、行くことが出来ました。
親には本当に感謝です。
奥田氏が土地法を専攻しようと考えたのはいつごろでしょうか?とお聞きすると大学院に入ってからだとのことでした。その時の担当教授が土地法の研究者だという事で影響されたようです。
また、バブル期で不動産というものが注目を浴びていたことも関係していると思います。
奥田氏は続けて以下のようなことも話されました。
私たちがモンゴルへ支援に行ったときは、モンゴル共和国からモンゴル国へと国名も変更し、資本主義国として土地所有法も出来ていましたが、土地を国民に配るという行為でいろいろな問題が起きていました。
ウランバートルの土地を個人に対して配るのですが、当然良い土地もあれば悪い土地もあります。
人間の欲というのは醜いもので、良い土地を手に入れるために賄賂を贈ったり、汚職が起きたりとしていたところへ法整備支援に入り、産業構造を整理してその上で集団に土地を配る提案などもしてきましたが、結局は人間の欲にはかないませんでした。
最初から貧富の差が生まれるような構造に、土地の配り方がなっていたのです。
人間の欲の醜さを実体験しましたね。
だいたいこの土地所有法は2004年にスタートしましたが、時限立法で2009年には国民に配り終えて閉じる予定でしたが、今も配りきれていませんので、続いています。
土地を配られていない人からは当然不平不満が渦巻き、政府も配り直しをし始めましたが、今度は土地を配られた人から不満が出てきます。
まだ土地を配られていない人たちが、ウランバートル周辺に非合法的に住みつきスラム化が深刻になっています。このスラム街をどうするかがモンゴルの喫緊の課題ですね。
また、所有法があるのは全土ではなく、ウランバートルだけです。遊牧民が暮らす草原などは国有地になっています。
もともと遊牧民には土地を所有するという概念が無いので、今でも動いて行った先を占有して暮らすという形を続けています。
ウランバートルで土地を配られた人たちは、その土地を担保にお金を借りて大きな仕事が出来るようになり富を増やして行けますが、土地を配られていない人たちは、不満が募りどんどんウランバートルに押し寄せてきますが、すでに配る土地が無いわけで、スラム街に入るしかないという悪循環が続いています。
彼らは家畜を処分してウランバートルを目指してきましたが、すでに配る土地が無く豊かになるすべがないのです。元に戻ろうとしても家畜を処分してしまったので、元にも戻れないという大きな問題が今モンゴルには起こっています。
今回スラム街も行ってきましたが、本当に貧しい暮らしをしています。仕事が無く、石炭などの燃えカスを売っていたり、廃品を集めて売っていたりしています。
現状ではそれ以上の展望が開けませんね。
教育のレベルも遊牧民は低いので、なかなか仕事についても定着するというのが困難な人が多いですね。
奥田氏からモンゴルの現状をお聞きするとまだまだ多くの課題を抱えている国なのだなという事が分かります。
とても砂漠化防止のために植林を行う余裕はないのかもしれないと率直に感じました。
だからこそ奥田氏の活動が評価されたのだと思います。
奥田氏が、芝稲門会の集まりの時に上記のような話をしたところ、若い117回生の3名が興味を持ってモンゴルの植林活動に参加したいと申し出てくれたそうです。
奥田氏も丁度植林活動を再開したいと思っていたところでしたので、希望を受け入れ、若い人たち(特に芝学園卒業生)を集めて今年(2024年)の夏にモンゴルで植林活動を再開するとのことです。
学生10名程度を組織してモンゴルへ向かうとのことですが、当然費用が掛かります。
学生たちに貴重な体験をさせたいが、学生にとって高額な旅費や活動費を全額負担させるのは忍びないという思いで、寄付を募り学生を連れて植林活動に再び向かうことにしたとのことです。
芝学園同窓生が主体となってモンゴルで植林活動を行うというのは素晴らしいことだと改めて感じました。
下記がその趣旨ですが、私も同窓生として是非応援したいという気持ちが湧いてきました。
@「なぜ寄付集めをするのか?」
日本の急速な経済力低下に伴い、若者が海外に出られなくなっているという現状を、
同窓会の先輩方に強く認識していただきたいという思いがあります。
私は拓殖大学で長年にわたって国際交流委員長を務めてきましたが、2017年ごろから欧米や豪州での短期語学研修プログラムが成立しなくなってきました。
要因は「費用が高い」(3週間で80万円超)ということに尽きます。
また政治的理由だと思われますが、中国や韓国でのプログラムも成立しなくなることが増えてきました。
芝学園の高1・高2向けの英語プログラムも、カナダ研修が90万円でニュージーランド研修が65万円です(いずれも2週間)。芝学園の1年間の授業料に匹敵します。
拓殖大学や芝学園のプログラムが格別に高いというわけではなく、これが諸物価の国際水準であり、わが国の賃金が国際水準からみて著しく低いという結果です。
他方で前途有為な能力を兼ね備えた後輩たちには、とくに途上国で見聞を広めてほしく、それが未来の日本の礎になると信じております。
しかし不特定多数の若者に機会を与えることは困難で、芝のご縁を有する若者に特定して、卒業生の善意をお分け頂きたいという趣旨です。
A「なぜ芝学園同窓会の支援が必要なのか?」
実は私が長年行ってきたモンゴルでの学生植林活動は、その後に学習院大学でも導入されました。
拓殖大学はあくまでも授業科目として実施し、参加費もすべて参加者の個人負担でした。
ところが学習院大学は同窓会組織である桜友会と尚友倶楽部が全面的にバックアップして、高等科から大学までで厳選された生徒・学生30名ほどが、奨学金の給付を得て参加するというシステムを構築しました。
2013年に5周年を記念して行われた帰国報告会には、なんと皇太子殿下(今上陛下)までご臨席遊ばされました。
このとき桜友会の会長が「恵まれて得た英知は社会に還元すべし」と仰っていたのは、まさにノーブレスオブリージュの考え方であり、社会を導く同窓会になり得ている学習院桜友会に感嘆することしきりでした。
今回のモンゴルの件で学習院同窓会のあの崇高な理念と団結力を思い出し、これは芝学園同窓会でもあり得るのではないかと期待した次第です。
下記は学生たちがプレゼン用に作った案内文です。
この案内文の末尾にもある通り、今回の植林ボランティアを契機として、将来世代と共生できる社会づくりの一助を担う人材育成が実現できれば幸いです。
同窓生のみなさんには、どうぞ本活動に対してご理解頂くとともに、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2024年芝学園卒業生植林ボランティアinモンゴル国
2021年6月に就任したオフナー・フレルスフ大統領は、第76回国連総会で気候変動と砂漠化対策に最適な方法は植林であると強調し、2030年までに「10億本植樹国民計画」を実施すると宣言し、2021年10月から同計画が始動しました。そして、2022年末までに21の県で植樹活動が実施され、約720万本の樹木が植えられました。しかし、10億本の目標達成には遥か遠く、多くの民間ボランティア等の協力を必要としています。
このたび、芝学園を巣立った現役大学生の有志メンバーが植林ボランティア団体を組織し、モンゴル国での植林活動等を実施する運びとなりました。地球温暖化が急速に進行して世界各地に深刻な影響を及ぼしている今日、森林や草原は二酸化炭素の吸収源としてだけでなく、生物多様性を育む場としても重要視されます。今回の植林ボランティアを契機として、将来世代と共生できる社会づくりの一助を担う人材育成も企図しています。
つきましては、関係する諸先輩方に、本活動に対してご理解頂くとともに、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
期間:2024年8月1日〜8月12日
参加者:10人程度
活動内容:別紙のとおり
目標金額:300万円
協力団体:NPO法人内モンゴル沙漠化防止植林の会(2000年創立)
企画者:以下の通り
岩丸晶太(芝学園117回生、早稲田大学文学部2年)
中川琉晟(芝学園117回生、早稲田大学文化構想学部2年)
中瀬皓基(芝学園117回生、早稲田大学先進理工学部1年) |
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